「永遠の森 博物館惑星」 菅 浩江,早川文庫JA (ISBN:4150307539)

永遠の森  博物館惑星 (ハヤカワ文庫JA)
間違いなく大傑作。

人類の生みだしたありとあらゆる芸術品が収蔵されている、オーストラリア大陸ほどの小惑星アフロディーテ。そのアフロディーテで真の美の探究をめざし、AIと膨大なデータベースに直結された学芸員を描く連作短篇集になっている。
基本的には主人公である学芸員田代孝広が、持ちこまれた難題を解決していくという構成になっている。
SFミステリともいえなくもないが、SF的なのは、女神の名が冠せられた賢いAI+データベースの描写くらいしかない。(頭の中に浮かんだあいまいなイメージをキーにデータが検索されて、ぱぱっと結果が返ってくる)
最初の1、2編は「へーこんなのあったら便利だよな」という興味と、「なるほどこうくるか」というミステリ的な解決にひっぱられていったのだが、読みすすめていくうちしだいに学芸員達の働きや苦悩に魅せられていき、最終話ラヴ・ソングでの圧倒的なシーンにはただただ感動されられた。
もはや語る言葉が見つからない。
とても、おもしろかった。