ハサミ男

ハサミ男 (講談社文庫)

ハサミ男 (講談社文庫)

読了。
ノベルスで出た当初から気にはなってたんだけど、当時「上手いけど、おもしろくない」という評判を聞いて手が出ていなかった一冊。もしかしたら違う作者の違う本の評判だったかもしれない。今回は、めぼしい本がなかったのと、「映画化」の帯につられて消極的に購入してみた。
で、読み進めてみると、いかにもその評判のとおり。話のタイプとしては個人的に好きなほう。内容や展開もそつがない。でもおもしろくない。好きなのにおもしろくない。なんだこれは。ずーっとその調子で、最後のほうの展開もまあ想定の範囲内にすっぽりと落ちていきました。まあ、帯でネタバレしてるしな。ああ、こりゃまた感想書きにくい本だなあ、と思ってました。最後の1ページ読むまでは。
やられた。何かしらないけど、やられたよ。ラスト1ページ、正確にはラスト1行にやられてしまいました。思わず「うおっ」って言っちゃった。本読んでて「うおっ」って。
これだけ書くと、「1行オチ」とか「最後にどんでんがえし」とかそういう話だと思われるかもしれないけど、そういうことではないです。全然落ちてないし、全然どんでん返しでもない。むしろ、そこまでに全てのしかけは完全に明らかになっていて、最後の部分は蛇足です。推理小説的、新本格的には。
でもそこに凄いショック受けちゃいました。なんだろうなあ。何にショックを受けたのか上手く説明できないのですが、後から考えてみると、推理小説の構造をメタに使った伏線がラストで時間差的に働いた、ってところかなあ。でもこれ以上、何をどう書いてもネタバレになりそうだし、ちゃんと説明したところで、「それ、考えすぎ」とか言われて終わりな気がするので、詳しく書くのはやめておこう。
まあでも、あのラストがあったおかげでこの作者の他の話も読みたくなったことは確かなのです。はい。