犬はどこだ

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

犬はどこだ (ミステリ・フロンティア)

今年も某講演会に足を運ぶ予定になったので、体裁を整えるために読んでみた。
めちゃめちゃおもしろかった。読みおわってちょっと寒気がしてきた。
開業したばかりの「犬探し」専門希望の私立探偵が主人公。開業直後に舞いこんできたのは、犬探し希望にもかかわらず「人探し」と「古文書の謎解明」という二つの仕事と、無理矢理転がりこんできた助手希望の後輩。主人公は後輩を雇ってしかたなく二つの調査を開始するのだが…、というお話。
主人公と後輩が別々に担当する「人探し」と「古文書」の調査は、序盤こそ関係するようで関係しないままそれぞれたんたんと進んでいく*1のだが、二つの話が噛み合いだす中盤ごろからは、まさに歯車が噛み合ったかのように勢いよく話が転がりだし、終盤を経由して微妙な余韻を残すラストシーンへと雪崩れこんでいく。特に終盤「陰画が陽画に転化」して、序盤にまでそれとなく埋め込まれていた伏線が拾われていく様子は御見事。あと、帯が秀逸。
いちごタルト(ASIN:4488451012)とトロピカルパフェ(ASIN:4488451020)を読んだ時にも、丁寧にロジックを積み上げていく姿勢は感じたんだけど、それは作者本来の持ち味だったようだ。安心した。あと、気持ち悪さの残る心理描写も得意なようだ。なんにせよ、もう一冊手を出してみて正解だった。あいかわらず派手さはないけど。他のも読もう。

ところで、主人公がつぶやいている「あれは、わかりやすい話だった」「わかりやすい話は、嫌いじゃない」っていうのは意図がとれなかった。妙に意味ありげに書かれてるのに、全然わかんなくてひっかかっている。なに?
あ、あと、インターネット上の情報のやりとりや漏れ方がやけにリアルに描かれていて感心した。ブログとかに迂闊に情報を載せてしまう人に読ませてみるといいかもしれないな。

*1:あまりの平凡な展開に、正直外れだったかなあとまで思った