Boy’s Surface

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

Self-Reference ENGINE」の円城塔の二冊目。今度は中編集。前回は黄色かったが今回は紫。
「数理的恋愛小説」とか帯に書いてあるけど中身はあいかわらずの飄々とした文章で、油断するとすぐ「演算」やら「計算」やら「チューリングマシン」やらいいだすSF馬鹿話。
一回読んだだけではあんまり伝わってくるものはないんだけど、一回読んでなんとなく構造を把握したところで二回目読むと感動してしまう。感動はしない。感動はしないけど、立派な恋愛小説集。さすが。
一番ストレートにおもしろかったのは表題作のBoy’s Surfaceかなあ。でも円城塔がルミナス書いたらループまでまざっちゃった、っていう感じのGoldberg Invariantも捨てがたいし、恋愛小説にチューリングマシンを使ったら、何故かラギッドガールや山本弘の「メデューサの呪文」*1みたいになったYour Heads Onlyもいける。Gernsback Intersectionもこの中編集の中では唯一女の子と男の子が二人きりで語らうシーンが登場したりして油断できない。
なにより、しょっぱなに「春と修羅」の一文がのっかってたのがポイント高い。「わたくしといふ現象は」ってやつ。これ個人的に大好きな一文なので今回も本屋で開いてちらりと読んだ瞬間に衝撃を受けたのでした。
まとめ。僕は円城塔が好きすぎる。

*1:シュレディンガーのチョコパフェ(isbn:4150309140)やまだ見ぬ冬の悲しみも(isbn:4152086998)にはいってる短編