「生首」「Q&A」読了

上記の「生首に聞いてみろ」「Q&A」を読了

生首は、最後まで安定した品質。かっちりした線路を上をはみ出すことなく、その制約の中できっちり楽しませてくれました。インパクトはないけど、シラケることもない。これぞ、法月綸太郎もの。

そして、「Q&A」ですよ。これが怖かった。すげー怖かった。今迄読んだ本の中で一番怖い本でした。
うまく書ける気がしないのと、どう書いてもネタバレになるかもしれないので*1最初から詳しく説明するのは避けますが、日常を侵食する非日常の怖さ、とでもいいましょうか。みなれた風景がなんのきっかけもなく、異なる世界に転じる怖さがみっしりつまってました。いや、そうじゃなくて、そもそもあれは異なる世界なんかじゃない、てところが一番怖いのだけれど。
いままでは、井上夢人の「メドゥサ、鏡をごらん」(ISBN:4575232904)が一番怖い*2本で次点が、恩田陸の「六番目の小夜子」(ISBN:4101234132)の文化祭のあのシーンなのだけれど、「Q&A」の怖さは、「小夜子」の怖さをより洗練してピュアなものだけ凝縮したものでした。
「リング」なんかのホラーの怖さとはかなり違う怖さだけど、僕にとってはそれが一番怖いです。

「Q&A」追記

ちらちらと、他の感想をたどってみた。「ラストが弱い」「最後失速」「あんなオチはいらない」という感想があるようだ。
僕としては微妙。たしかにインパクトはない。さらっと終わってしまう。しかも、最後にきて違うトーンになっちゃう。「あれ?」ってなもんですよ。でも、たぶん「オチ」は用意されてないんじゃないかと思います。用意されていないのが、本当に怖いところなんじゃないかと思います。たった今そう思いはじめたところ。
一見「オチ」や説明に見えるアレも、実は全然説明になっていない。ある面は説明されているけど、そこは全然重要じゃなくて、「怖さ」はしっかりその外まで手を拡げている。それこそ、孫悟空が出られなかったお釈迦様のてのひらのように。
あの本では、「オチ」や「しっかりしたラスト」を用意しないで「怖さ」を拡散させたんじゃないかなあと感じています。拡散させていろんな形で「怖さ」をこの世に降り積らせたんじゃないかと。ほら、たとえば、あなたの足元に。

さらに追記

ああ、そうか、村上春樹の「アンダーグラウンド」ってこんな構成なんだよな。読んでみようかな。(何か順番が逆な気がする)

*1:何をどう書いてもネタバレにはならない気もするのですが

*2:あまり誰も同意してくれない上に、「それは誉めすぎ」とまで言われたこともあるが。