破線のマリス

破線のマリス (講談社文庫)

破線のマリス (講談社文庫)

テレビ業界の内幕を描いた、サスペンス、、ということになるのかな。報道番組で流す映像を編集する女性が主人公(だよな)。「報道の公共性」を考えず常に独断選考で映像を作ってしまう(そして良い視聴率をたたきだす)主人公が、内部告発者から得た映像を利用したことから、陰謀に巻きこまれていく、というお話。

こんなに主人公にムカツいた小説はひさしぶり。上で「サスペンス」と書いてみたものの、実際には、思い込みだけで動く主人公が報道被害をひきおこし、後にひけなくなってどんどん暴走していくだけのお話。自業自得。徹頭徹尾、自分の仕事の持つ力を自覚せず、それを隠れて行使する態度はうんざりを通りこして、御見事か。

内容もどうにも中途半端な感じがいなめない。主人公が力を制御できずに暴走していくのは見事に描かれてたけど、あらあら、やっちゃいましたか、みたいな感想しかでてこなかった。もうすこしマトモに見える人物を主人公にすえて、「ジャーナリズム」と報道被害のギリギリの線につっこんでいくものを読みたかったなあ。最後の最後で、主人公は「与えられた映像を一度疑ってみなければ自分なりの真実は掴めないのです」とかいう内容のこと言うけど、そりゃ、あんたみたいな人が作ってる映像なんか信じられんわな、とこちらは白けるだけでした。「報道」ってなんだろな。

まあでも、ここまでムカツかせられるってことは、小説としてはよくできてるんだろな。うん。