氷菓 ・ 愚者のエンドロール

氷菓 (角川文庫)

愚者のエンドロール (角川文庫)

講演会に行き損ねた米澤穂信の“省エネ”高校生・折木奉太郎シリーズ二冊を一気に読了。
これもおもしろかった。「さよなら妖精」や「夏季限定」「秋季限定」に比べて全体的に軽いタッチで、ストーリーもテンポよくぽんぽん良くすすんでいってかなり読みやすかった。本を読んでる場合じゃないのに連続で読み切ってしまったよ。
氷菓のほうは他の作品と全く同じパターンで、主人公が嫌々ながら日常的な謎を解きあかしていくと、最後のほうでそれが関連しつつ人間の黒さを暗示させるような結末に辿りつく。愚者のエンドロールのほうはうってかわっていかにもな推理小説。作中作をめぐるマニアックな推理合戦。でもやっぱり一番底には黒さが見え隠れする。あ、でも『愚者のエンドロール』自体は他から浮いてる気もしなくはないな。大好きだけど。そして、このシリーズの決めゼリフは「わたし、気になります」。
(たぶんサービスだと思うけど)ストーリーも最初から最後までわかりやすく転がっていってくれたし、本自体も薄めなのでさくさく楽しんで読めた。個人的にはテンポの良さと黒さのバランスはこれくらいが丁度いい。…千反田えるをはじめとして、わかりやすいキャラ造形のおかげかもしれない。
でもこの後に出た本の傾向を考えると、作者の人はこういう「サービス満点のわかりやすいお話」を書きたいんじゃなくて、もう少し人間性の暗示を重視したものを書きたいんだろうな。個人的にはこれくらいの軽さのものを量産してくれると非常に有り難いのだけれども。えーと、つまり、このシリーズの続編が読みたいです。
あ、「クドリャフカ」が続編なのか。まだ文庫になってないみたいだなぁ。